ヨコサワさんのJJでのコールは正当化できるのか?

ポーカー民の皆さんこんにちは。

今回の記事では、ポーカープロのヨコサワさんがBally Live Pokerの配信ポーカーに参加している際に、話題になったワンハンドを解説していきます。

ヨコサワさん本人が動画でなぜコールをしたのかを解説しておりましたので、それを踏まえてのハンドレビューとなります。

まずは、どんなアクションだったのかを見ていきましょう。

目次

ハンド振り返り

5人テーブル

$25-$50-$100ストラドル

およそ$25kのエフェクティブスタック

プリフロップ:

COがフォールド、ヨコサワさんがボタンでJJ♣で$250にレイズ、SBにいるLという常連のプレイヤーがQ♣5♣コール、BBのプレイヤーがフォールドし、ストラドルのプレイヤーがコールを選択し、スリーウェイでフロップへと向かいます。

プリフロップ解説:

ヨコサワさんがBTNでJJという、プレミアムハンドが入りました。$250にレイズを選択しましたが、良いサイズ選択と言えます。一方で、LはSBからQ5sという、ややルースなコールを選択。このハンドでSBから参加をするのは、長期的に見てマイナスなプレイと言えます。

フロップ($850):Q J 8

BTNのヨコサワさんまでチェックで回り、ヨコサワさんは$600の選択。Lがコールをし、ヘッズアップでターンに向かいます。

フロップ解説:

フロップにて、ヨコサワさんのJJにセットが刺さりました。SBとSTRのプレイヤーにQQのレンジがないことから、ヨコサワさんはナッツを持っていると考えて問題ないでしょう。Qのヒットレンジもアンブロックしていることから、ヨコサワさんはこのハンドではできるだけ早めにポットを膨らませていきたいところです。

ヨコサワさんの$600のベットは、ペアやフラッシュドローに向けて最大限バリューを取ることが可能な、最適な良いサイズだと言えます。ナッツアドバンテージを活かし、フロップからポラライズすることも可能ですが、ヨコサワさんのプレイスタイル上、$600は良い選択だと思います。

ターン($2050):Q J 8♣ 8

SBのLが、$1000のベット。それに対してヨコサワさんはコールを選択。

ターン解説:

Lはこのターンにおいて、ドンクベットを選択しました。ターンで、SBのレンジに有利な8が重ったことにより、レンジを活かして積極的にベットをしてきました。Lはアグレッシブでレンジに対しての理解も深いため、ある程度広めのレンジでドンクを打つことが予想できます。今回のようなQヒットでのブロックベットや、8ヒット、フラッシュドローやストレートドローなどのブラフがレンジとして考えられます。

より具体的には、Q2s~QTs(約30コンボ)、QT~KQオフスーツ(24コンボ)、85s~A8sとA8o(約25コンボ)、ハートのフラッシュドロー(おおよそ40コンボと仮定)、KTやT9のストレートドロー(約30コンボ)です。

この$1000のベットに対して、ヨコサワさんはコールを選択しました。

このコールは、あまり良い選択ではないと言えます。

ヨコサワさんのJJはエフェクティブナッツであり、できるだけポットを大きくすることが優先されます。SPR(スタックとポットの比率)も高いことから、スロープレイは控えるべきでしょう。Lのドンクベットレンジに対してレイズをすることで、自分より弱いハンドからバリューが取れる、かつLがルースなプレイヤーであることから、ほとんどのフラッシュドローなどのハンドからコール(もしくは一定の頻度でレイズ)が貰えると考えられます。

Lにはブラフのレンジも多くあり、そのようなハンドに継続してブラフをさせるための選択としてコール止めをしたこと自体は、特段のミスとは言えません。状況によってはその選択がベターともなりえます。

しかし、全体的な期待値でみると、ターンでのレイズをすることが推奨されます。

以上の理由からターンでのコールは、長期的にみてあまり宜しくない選択と言えます。

リバー($4050):Q J 8♣ 8 8

Lが$1200のレイズを選択。それに対し、ヨコサワさんはコールを選択をし、ショーダウンにてポットを獲得。

リバー解説

リバーで8が落ちたことにより、8のクワッズとT9に捲られた形となります。一方で、先ほど解説したLのベットレンジには、Q持ちのフルハウスやフラッシュなどが完成された形となります。

このリバーにおいて、Lは$1200の小さいベットを選択しました。このベットレンジには、Qヒットのフルハウスや完成しなかったストレートドローのブラフ、8のクワッズが含まれていると考えられます。Lのレンジにフラッシュもありますが、フラッシュはチェックを選択することが多いため、Lのレンジには含まなくても大丈夫でしょう。

8が落ちたことにより、Lのクワッズのコンボは8♠5♠~A♠8♠、A8oの計15コンボまで絞ることが可能となります。もちろん、Lが98oや87oのようなハンドで参加をしている場合もありますが、ここでは簡略化のために一旦15コンボで考えていきます。

一方で、Qのレンジは約54コンボと変わらないと言えます。その他ヨコサワさんが勝っているレンジには、いくつかのブラフが考えられます。一部のストレートドローでブラフをしていると考えると、約30コンボをブラフのレンジに入れても問題はないでしょう。

コンボ数で考えると、推定で約80のコンボの勝っているハンド、対して約15コンボの負けているハンドと言えます。

ここでは、あくまでLが持ちうる可能性のあるコンボを推定しているだけなので、コンボ数単体が実際にLがなにを持っているかの確率の計算とはならないことに注意をしましょう。

Lには勝っているQのフルハウスのレンジが非常に多くあり、Lの$1200のベットに対してリレイズをした場合は、コールを貰える可能性が非常に大きいことから、レイズを選択するのが一般的です。ここでのコールは少しパッシブすぎると考えられ、このハンドは話題になりました。

このコールに対して、以下のYoutubeでご本人が解説をしています。

要約すると、ヨコサワさんはLが20%の確率でクワッズを持っていると仮定し、その場合の期待値はコールの方が高い、もしくは期待値が多少低くとも、バンクロールを鑑みた長期的な分散を抑えることを考えてコールという選択をしたと解説しております。

期待値に関しては以下の記事で解説しておりますが、ポーカープレイヤーとして期待値をもとに判断を取るというのは非常に重要なことです。あの短時間でおおよその期待値を考え抜き、判断に至るというのは非常に難しいことでありますが、その点は流石ヨコサワさんと言えます。

一方で、あの時の判断が正しかったのかどうかに焦点を合わせると、間違っていると言えます。結論、あのハンドで、リバーは100%の頻度でレイズをするべきです。

ヨコサワさんの解説には、何点か違和感があります。

ミスその1

まずは、Lがクワッズを持っている確率を20%としている点です。

上記で筆者が解説した通り、Lが8のコンボをおよそ15コンボ持っていると考えるところはOKです。一方で、相手がクワッズを持ちうる確率を考える上で、コンボ数だけを考慮するのは得策ではありません。

わかりやすい例を挙げると、赤い石が4つ、白い石が4つ、青い石が4つ入った箱があるとします。この中から一つだけを選び、色を見ずに自分の手の中に隠します。その後、三つ箱から出し、全て赤い石だったとします。

その場合、手の中にある石が赤い確率は、白か青である確率と同等でしょうか?

皆さんも感覚でわかると思いますが、同じではありません。実際に赤い石を手に持っている確率は、白や青の確率よりもはるかに下となります。

この確率の計算方法や条件付確率の応用となりますが、感覚としてこれを理解できていれば現状としてはOKです。

話を戻しますと、Lがクワッズを持っている確率は、可能性のあるコンボ数が15コンボあるとしても、果たして20%もあるのでしょうか?

結論として、ないと言えます。

先ほどの例に当てはめてみると、もしLが8を持っていると仮定した場合は、リバーでも8が出る確率ははるかに下がります。こういった条件確率を考慮すると、単にLが持ちうるコンボ数だけを見るというのは数学的におかしいということがわかると思います。

実際にLがあの状況でクワッズを持っている確率を計算することは困難ですが、一般的なトッププロは、最大でも10%、基本的には5%程だと仮定するのではないでしょうか。もしLがターン辞典で8を持っていた場合、リバーでクワッズになる確率は約2%です。その上で、アクションを鑑みるとそれよりも高い数値でみるのは一般的だと思いますが、それでも5%程度で見積もるのが一般的だと言えます。

これらを考慮すると、20%はあまりに確率を過大評価していると言えるでしょう。

人間の心理上、相手が自分より強いハンドを持っている確率を過大評価してしまうのは一般的です。(プロスペクト理論)感覚値は、基本的に実際の確率などよりも大幅に過剰評価してしまうことに注意しましょう。

ミスその2

二つ目の違和感は、ヨコサワさんがレイズをしたとして、Lがリレイズをした場合のサイズをオールインと見積っている点です。ポットには約4000ドルあり、ヨコサワさんがLの1200ドルに対して4000ドルのレイズをした場合、オールインとなるとリレイズに対して5倍である20kの特大オールインということになります。ギャレットのような、非常に大きいサイズのベットを好むプレイヤーならばもちろん高頻度でそのようなサイズを選択することはあり得ますが、Lはそこまでの大きいサイズを選択するような特徴はありません。Lの特徴を鑑みての感覚値として、3倍~3.5倍のスリーベットサイズが一般的になると予想できます。相手のスリーベットの大きさをオールインと仮定していることにより、期待値をマイナスに見積りすぎている結果となっております。

また、リレイズに対してスリーベットが返ってくる確率も、ヨコサワさんは30%以上と推定しておりますが、実際にはもっと低いでしょう。ヨコサワさん自身、Lからスリーベットブラフをした経験があることにより、大幅に高く見積もってしまっています。Lのプレイを統計的にみても、スリーベットレイズをそこまで頻度高くするプレイヤーではないと考えられます。

その他にも、いくつかの違和感のある見積りや計算の漏れ等はありましたが、大きくこの二点が認識としてズレてしまっており、間違った判断に至っていると考えられるでしょう。

結論

結論として、JJでコール止めをするのは、パッシブすぎるプレイであり、推奨できるアクションではないと言えます。

当たり前ですが、一つの間違った判断をしているからと言って、ヨコサワさんのプロとしての実力が高いことを否定するものではありません。あくまで日本のポーカープレイヤーがこの記事を参考にし、ポーカーに対する理解を深めるための解説記事でした。

本日は以上となります。

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